コッソリと更新&言い訳

 何とまぁ随分と書かずにおりました事か。もう何度目になるかも分かりませんが、またしても空いてしまいました。ごめんなさい。情けなや。でも、これだけ空いてしまったのにも訳があったのです。どうか聞いてくださいまし。
実はワタクシですね、ここ暫くの間ずうっとスランプに陥っていたのです。「お前なぞ、初舞台の日から今まで好調な時なんぞあったのか」という御批判の声が聞こえてきそうです。でも、もうこのブログを読んでいる人はいなさそうなので、ちょっと安心です。
それでですね。私は遂には或る職業への転職まで考えてしまった事もあったのです。
その、きっかけは衝撃的なものでした。それは3ヶ月ほど前の事。いつもの様に受けない舞台を終えてバーで独り飲んでいたら、お店にある大画面テレビにエルビス・プレスリーが1970年にラスベガスでやったコンサートの映像が映し出されていたのです。
「おぉプレスリーだ。格好いいぜ。」
別にただ何となく、そう思いながら飲んでいたその時です。どこからともなく声が聞こえてきたのです。
「…オイ、ゲン。キコエテイルノカ?ゲン。」
辺りを見回しても、マスターは黙々とグラスを拭いていています。奥にいるカップルは二人で楽しげに話しています。「空耳かな?」と思ったら再び。
「ココダ!ゲン!!」
なんとその声は大画面から聞こえてくるではないですか!そして、その声は紛れも無くエルビスの声でした。驚いた事にマスターやお客にはエルビスは普通に歌っているようにしか見えてない様子です。呆然とする私にエルビスは語りかけます。
「ゲン。お前はいつまで、そんな漫談でくすぶっているつもりだ。俺は天国からお前が川越のカラオケ館で独り歌う姿を見た時からキング・オブ・ロックンロールの後継者はお前だと確信をしてきた。それが、どうだ。来る日も来る日もさとう宗幸ばかりやりやがって!!ゲン。これが最後の忠告だ。シンガーになれ。シンガーと言ってもミシンじゃないからな」
そう言うと大画面の音声は再び元のコンサートに戻りました。
私は店を出て、夜のネオン街の中を無我夢中でカラオケ館に向かって走りました。
「そうだったのか。俺はロック歌手になるのか。早速練習だ!」
息を切らしてカラオケ館に転がりこみ、急いで1曲目を送信。
「ハート・ブレイク・ホテル」
発音はメチャクチャですが、もうエルビスに太鼓判を押されたのだから恐れる事はありません。立ち上がって熱唱していた、その時ドア越しの女子高生と目があいました。
「いけない!和製エルビス誕生の瞬間を見られてしまった。興奮して入ってこられたらどうしよう」
心配する私を目の前にして、彼女は「ブフッ」と口元を押さえて去っていきました。
カラオケの画面に映っているエルビスから再び声が聞こえてきました。
「ゲン。俺が悪かった。」

そんな事があってから、私は再び「哀愁の芸人」としての道を歩んでいく事を決心したのでありました。
(※なお、この話はフィクションですが、一部実際にあった出来事を基にしております。)